こだまdeしょうか?

渋谷で働く学生複業研究家のブログ

「自分の限界を設定しているのは自分」思い込みをなくした先へ ~医学生×マジシャン 志村祥瑚さん~

毎週月曜日に開催する少人数制の勉強会「HARES LIVE

5月22日の回は、現役の慶応大医学部の医学生でありながら、プロのマジシャンとしてラスベガスのマジックの世界大会で優勝された経験を持つ「学生複業家」の志村祥瑚さんがゲストでした。

人間の「思い込み」という特性を利用してトリックを仕掛けるマジックと、同じく「思い込み」が重要な役割を占める「精神医学」を専攻、研究されている志村祥瑚さんによる「思い込みに縛られることをやめる」という話は大変参考になるものでした。
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志村 祥瑚さん
1991年10月8日生まれ。東京都大田区出身日本の医学生、研究者、プロマジシャン、パフォーマー一般社団法人日本認知科学研究所代表理事慶應義塾大学医学部精神医学研究会代表である。 日常生活での「思い込み」や「錯覚」の面白さを、マジックや指先のテクニックを使って解説し、思い込みのメカニズムを分かりやすく体感できる講演、ワークショップを全国で行なう。 講演ではマジックの種明かしも行うことで、「先入観の怖さ」や「思い込み」に気づく大切さを伝えて自分の知覚や先入観と向き合うきっかけを提供している。 彼の講演や手法はアカデミックな背景に支えられており、精神医学を学ぶために2010年から慶應義塾大学医学部に入学。マジシャンをして行く中で培った経験を元に慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科と共同研究を開始し、「思い込みを変える」新しい心理療法・メンタルトレーニングの開発を行なう。 そのメンタルトレーニングは他の人になかなか言いづらい悩みを、自分一人で解決することを支援するプログラムである。 彼はマジックと、研究開発しているメンタルトレーニングを用いて、経営者、エグゼクティブ、オリンピック選手、教授、医師など様々な分野のクライアントにカウンセリングを行う。
志村祥瑚 - Wikipedia

ストーリー

医学生でありながらマジシャンとしても活躍される、志村祥瑚さん。



マジックを趣味で始められたのは8歳の時。
楽しくて覚えたマジックを学校で披露し人気者になったそうです。

しかし、目立っていくにつれて、自分のことを面白いと思ってくれる友人が減ってしまったという。
その結果、「目立つ人は嫌われるんだ」と思うようになり、中学校ではマジックをやめて真面目に勉強するようになったそうです。

ある日、医学の本を読んでいると「人の気持ちになりなさい」という文字に目がいきます。
その言葉にハッとし、「自分が気持ち良くなるためにマジックをやっていたから、皆が見てくれなくなったんだ」と気づいたのです。

その気づきから「人を喜ばせるためにやろう」とマジックを再開。
それからは毎日練習し、友達の前でも披露します。
高3年次には2000人の前でマジックができるような腕前に。

その後、慶應の医学部への進学が決まり、記念にラスベガスのマジックコンテストに参加することになります。
しかし世界から精鋭が集まる大会ということもあり、結果はあえなく惨敗。

現地のマジシャンからは「youにはパッションが足りない」と怒られたそうです。
南アフリカの人は、仕事で必死に貯めたお金を使って来ている。
明日生きていけるか分からないという環境下で来ている人がいるのに「自分は何しているんだ」と強く思ったそうです。

挫折経験を味わい、とても悔しかった志村さん。
そこからはスイッチが入り、さらに本気でマジックの練習に勤しむように。

「医学部生だから忙しい」は関係ない。
1日8時間練習することを掲げ、移動の電車の中であろうと隙間時間を利用して練習する。
その結果、翌年には雪辱を果たして見事優勝を飾りました。

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(日本テレビ系「スッキリ」)

思い込みをやめる

志村さんの人生の中には何度もターニングポイントがありました。
そのターニングポイントの中で、挫折や困難を乗り越えられたのは「思い込み」をやめられたからです。

・小学生の時の「目立ったら嫌われる」という思い込み
→ 「すごい」と思われたい自分の欲求のためだったから疎まれた。
相手を喜ばせるためにやれば楽しんで見てくれる。

・コンテスト出場前の「人生にはレールがある」という思い込み
→ これまでは世間的に良いとされている基準に則って生きてきたが、可能性は無限大なんだと気がつく
自分が自分に制限をかけているだけだった。

・「医学部の学生が忙しい」という思い込み
→ 隙間時間を利用すれば、1日8時間の練習量を確保できた。

結局は、思い込んで「自分が自分に制限をかけているだけ」だった。
思い込みをやめることで前に進めたのです。

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「医療×マジシャン」

アメリカのコンテストで優勝した志村さん。
「優勝できたのだから、絶対幸せになれるだろう」と思っていたのですが、それすらも思い込みでした。

優勝したにも関わらず、どこか満たされていない自分がいる。
それは、「医学部にいる」という自分
マジックで優勝したにも関わらず、今まで通りのレールの上にいる自分。
そう思っているにも関わらず、医学部を辞められない自分。

モヤモヤした志村さんは、自分がそれまで「マジックをやっていた動機」を考えてみることに。
見えてきたのは「マジックによって自分を認めさせたい」という想いでした。

しかし、そこには虚しさも存在していました。
「自分に足りない何か」を補うために地位や名誉を求めてもキリがないことはわかっていたのです。

「自分の価値を証明する必要がある」という「思い込み」をやめ、自分の人生を認めてあげたことで、次第に気持ちが楽になっていきました。

それからは自分の人生や環境など、周りにあるもの全てに価値を感じられるようになり、物事を自分ごととして捉えられるようにもなりました。
無理だと思い込んでいた「医療とマジック」の融合も可能にしました。
精神医学のカウンセラーとして「思い込み」をうまく使い、人々を良い方向に導くことです。

思考が行動に影響するという思い込み

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我々は映画などのエンターティメントの枠組み内であれば、喜怒哀楽を楽しめます。
しかし、現実世界の話となると嫌な気持ちを避けてしまいがちです。

嫌な気持ちを避けようとしても、リバウンドして跳ね返ってきます。
人間は思考や感情をコントロールできないのです。

「夏の暑い日にアイスクリームを口に含んだ時のとろける感じをイメージしないでください」と言われたら、イメージしてしまいますよね。

同じように、不安を避けようとすればするほど不安が増してしまうのです。
サッカーのPKの前に「落ち着け」と思えば思うほど、「落ち着いていない」という前提があることになり、余計に焦ってしまいます。

ここで重要なのは、「その思考と自分を切り離すこと」です。

イメージとしては、頭の中にTwitterのタイムラインがあるような感じ。
自然と頭の中でツイートが流れていきます。
その中で、あるツイートをトップに固定してしまったら、それに行動が支配されてしまいます。

そうならないためには、一つのツイートがタイムラインに流れただけなんだと受け流すことが大切です。
これが「思考と自分を切り離す」ということ。
それができれば、思考が頭の中で鳴り響いていても、行動しない選択を取ることが可能になります。

「立ち上がれ!」と頭の中で何度も強く繰り返してみてください。
繰り返したからといって、「立ち上がらない」こともできますよね。

それはその思考を行動として選択しなかったからです。
自分にとって役に立たない思考であれば、無視することもできるのです。

これは簡単な例ですが、要領は同じです。
肝心なのは「思考を固定しない」ことです。
思い浮かんだ思考が良い思考であれば、取り入れればいいだけです。

現実を仮想現実化して楽しむこと

志村さんが思い込みをやめることができたのは、現実を仮想現実のように捉えられた時だったそうです。

有名な思考実験として「水槽の脳」というものがあります。

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水槽の脳(すいそうののう、brain in a vat)とは、「あなたが体験しているこの世界は、実は水槽に浮かんだ脳が見ているバーチャルリアリティなのではないか」、という仮説。
水槽の脳 - Wikipedia

これと同じように、今生きている世界が精巧に作られたVRのゲームと何が違うのかということを証明できませんよね。

こんなイメージで一歩引いた視点から自分を俯瞰して、自分を物語の主人公だと思うことが大切です。
そういう風に捉えてみることで、いわれなき全能感(根拠のない自身)が出てきます。

「もし人生に制約が全くなかったら?」と考えてみてください。
何でもできてしまったら、飽きてしまって、何もやる気が起きなくなってしまうと思います。
それはまるで、ポケモンを全部クリアした後のような状況です。

「本当は何でもできるかもしれないが、簡単だからつまらない。だから制約を人生に設けている」
こう考えてみたら、人生が面白くなりませんか?
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たしかにコンフォートゾーン(自分にとって快適な状況)にいたら恐怖はやってきません。
でも本当にそれで楽しいですか。

自分の人生が映画だとしたら恐怖のシーンは必ずほしいですよね。
失敗シーンのない、ハッピーエンドだけの5分くらいで終わる映画はつまらないです。

やりたいことがあって挑戦するから恐怖が生まれる。
でも、何をやるにも恐怖は付きものです。
結局は、それをどういう風に捉えるか次第。

「人生には苦痛がある」という前提のもと、自分がしたいことのために、ネガティブな感情や体験が訪れようとも楽しめるかどうか。

そうでなければ、どこか逃げている感覚を感じてしまう。
自己実現、やりたいことをやっている人なら、誰しもが不安を感じているのは当たり前です。

苦痛を避けない生き方をしましょう!


志村祥瑚さん、ありがとうございました!

志村さんが出演される公演はこちら↓
「イヤな気持ちにサヨナラする方法 ~新世代の認知行動療法ACTを用いた体験ワークショップ~」 | Peatix

児玉悠太朗